焚き火
松本 卓也

一日、心から出なかった声を
全て集めて並べてみたとして
どれだけの意味が成るのだろう

パソコンに資料を打ち込みながら
屋上で煙草を咥えながら
昼飯を買いにいく道すがら
咳に咽んで泣きながら

時はただ過程を積み上げつつ
結果だけを導いていくもの
独り言と成って零れた音
胸の内で消え去った言葉

大切に繰り返してみようとしても
振り返れば十分前に思ったことさえ
はっきりと思い出せないのに

居場所を探せない寒風の中
足元、枯れ積もる木の葉を
クシャクシャと踏み潰していく

消えた声の成れの果てが
最後に聞かせてくれたのは
か細く乾いた断末魔

無駄に響かせてみたところで
やがて風に紛れて消えるのならば
せめて記憶の片隅に積もれよ

残骸となった言の葉でさえ
妄想の炎を灯せたら
隙間だらけの裏腹も
少しくらいは温もるはずさ


自由詩 焚き火 Copyright 松本 卓也 2011-01-27 22:48:08
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