彼女いない歴41年
はだいろ

ど根性ガエルの
教員生活25年なんて
ぼくの彼女いない暦41年にくらべれば
どんなに甘い風雪じゃないか

でも素人童貞というわけではない
32歳のとき、
チャットで知り合った20歳の女の子と、
地方都市まで出かけて行って会って、
見た瞬間、
「しまった」と思ったのだけれど、
口に出すわけにはいかず、
地元のラーメンを食べた後、
ホテルで一夜を共にした。
ひどい目にあった。
悪いことをしたけれど、まあ、仕方がないことだ。

ぼくを好きになる女がいなかったわけじゃない
バレンタインにチョコをもらったこともあるし、
人聞きの人聞きで告白されたこともある
家に来られてご飯をつくってもらったこともあるし、
連続28時間の長電話をしたこともある
だけど、
そのだれとも、ぼくは付き合ってはいない。
なにか、違う、どこか、違う、というふうに判断した。

ぼくが一目惚れした女ももちろんいる
初恋の人には、
再会のときにすら初恋に落ちてしまって、
好きで好きでぼくのこの一回の命では持ちきれないほどなので、
とても今生における告白にはたどりつけなかった
もうひとり、
電撃的に可愛いと一目惚れした女の子には、
彼氏がいたけれど、
かまわず猛烈にアタックして、
だけど、
自然にまかせるタイミングというものがわからず、
咲きそうなつぼみも、
あえなく枯らしてしまった。

だから、
来る人は受け入れることができず、
望む人には受け入れてもらえず。
そうゆう41年間が、過ぎ去ったのである。


ところが、
そうゆうぼくに、彼女ができるかもしれないのである。
相手は、
ぼくは、若い子がそりゃいいのだけれど、
年は、38歳。
職場の、隣の席の、派遣社員さんである。
AV女優でいうと、じゅうぶん熟女である。
遠くから見ると、少女のようでもある。
どうにもぼくのことが気に入ったのか、
だけど、
職場のぼくなんて
ほんとうに、氷山でいうと、
一角の数パーセントでごまかしてるだけだから、
ぼくの何を気に入ったにしろ、
こんなに深々と自省している
詩人のぼくなど、
わかりはしないに決まっている。


いままでのぼくなら
これは、違う。の一言で、
黙って納得して、
付き合おうとなんて、しなかったに違いない。
だけど、
だけど、
いま、ぼくは、迷っている。
もしかしたら、
もしかしたら、
大切なのは、受け入れる。ということなのではないだろうか?
ぼくが、
ほんとうに今まで受け入れなかったのは、
現実の、ぼく自身そのものではなかったのか。
あの38歳の人が、
ぼくの隣で、ぼくのたわごとやぼくのわがままを、
怒ったりなだめたりしてくれることで、
ぼくのほんとうの現実は形づくられていいのではないだろうか。


職場からの帰り道、
震える横断歩道で、
ビルの隙間に、
冬の東京タワーがオレンジに輝いている。
ぼくの迷いも星のように瞬く。
彼女いない歴41年。
と、4ヶ月・・・







自由詩 彼女いない歴41年 Copyright はだいろ 2011-01-24 20:37:28
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