君が満足するためのロックなら僕は要らない
ホロウ・シカエルボク




君が満足するためのロックなら僕は要らないよ
どこかで見たことのあるアジテーションだとか
どこかで見たことのある図式だとか
ありがちな無頼漢だとか、そんなやり方なんて
街中が弛緩した今となっては何の意味もないことさ
君がやってることは子供番組の
気ぐるみを着て踊ってる連中と大差ないことさ
君が満足するためのロックなら僕は要らない、僕はロックにそんなものを求めたことはない
ゴダールはローリング・ストーンズを正しく理解していた
君の言うテンションとやらがどのあたりのものを指すのかなんて僕には想像もつかないけれど
ロックなんて本当は突き抜けないものこそが正解なんだ
芸術は混沌と向かい合うためのツールなのさ
君の言うロックがもしも本当なら
最高のロックンローラーは快楽殺人者だ
判るだろう、頭の中で狂気を完結させることこそが
本当のロックには必要なことなのさ
僕は頭の中で内臓のなかを歩く
僕の内臓でもあり、誰かの内臓でもある
僕は時々爪先で内臓を引き裂く、吹きだした血は僕を真っ赤に染める
僕は真っ赤な顔で歩く、それはあらゆる感情の象徴でもある
濡れてしまったので寒さを感じる、僕は内臓の一部をはぎ取って身体に巻きつける
そして血を吐く、それは僕の内臓であり、誰かの内臓でもあるからだ
誰かがどこかで僕のように、僕と同じ血を吐いていることだろう
僕はそのすべての血を手のひらですくって
ひとつ残らず見極めたいと思ったことがある、遥か昔
それこそがロックだって信じていたこともある
だけど今は違う、だけどそんなに遠く離れても居ない、ただそこに
近づきすぎることもないなって時々思うだけさ
君が満足するためのロックなんて僕は要らない
君はロックンロールという部署に所属してるただのサラリーマンだ
ロックンロールという営業指針を胸に
マニュアルに沿ってキャリアを積み上げているんだ、保険みたいにね
君はロックンロールという道を踏み外しはしないのさ
君が満足するためのロックなんか僕は要らない
それがロックだって言うなら僕はロックしない
君は
いろんな扉に鍵をかけて
自分の聖域を確保しているだけさ






自由詩 君が満足するためのロックなら僕は要らない Copyright ホロウ・シカエルボク 2011-01-22 09:55:54
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