永遠に解けない雪 (改稿)
結城 森士

冬の日に雪となり
 ひとつの場所に留まり続けたいと願う



白い静寂の中で
庭園の外灯に照らされ
少年たちの雪遊びを眺めながら
二人はベンチに腰を掛けている
舞い落ちていく綿雪が
溶けて消えてしまう前に
永久の愛を伝えようとした
あなたがそれを望んでいたから

あなたがそれを望んでいたから
存在しないはずの永遠を声にした
けれど口から出た言葉は
白い息と共に冷たい大気の中に消えてしまう

静けさのなか振り返ると、遠く離れた冬の日に
一筋の涙を流しているあなたが見える



朝もやの霞の中
太陽の光に照らされ
溶け出した雪だるまを見つめながら
一人の少年が日陰を作っている
昼になればやがて降りそそぐ太陽の光が
すべて溶かしてしまうだろう
あの健気な少年の心さえ

あの健気な少年の心さえ
偶像崇拝に過ぎないのだから
悲しい顔を浮かべながら
存在しないはずの感情が語りかける
悲しみすら幻想に過ぎないことを
自我ですら記号に過ぎないことを

固体が液体に融解するという絶対的な現象の下に
溶け出した雪だるまが泣いている



夕刻に潤む落陽
薄汚れた雪の残骸
何かを手に入れようと手を伸ばしたが
何が欲しかったのか分からなくなってしまった
ただ、雪のように白く在りたい
決して汚れたかったわけではない
灰色の雪解け水になって
排水溝に流されてしまう
そしてもう何も残らない
けれどそれでいい
永遠なんてないのだから

けれどもし
言葉が永遠に残るのというのなら
あの冬の日
二人の心を溶かさないように
わたしは、口を閉ざしたのに


自由詩 永遠に解けない雪 (改稿) Copyright 結城 森士 2011-01-18 12:30:05
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