鴻鵠へ
相差 遠波

あなたが止まり木で休んでいる間に
燕雀がちょっとさえずるけど許してね

快適な檻をお探しのようだけど
ここら辺では貴方が翼を広げられるような檻は
ちょっとないかも
私にとっては広すぎるこの檻すら
貴方にとっては翼を畳んで
身をすくめて立っているのがやっと
その窮屈さは
離れて見ていても目に明らか

じゃあ何故檻にこだわるのかと尋ねてみれば
飛びつづけるのに疲れるからという
でも首を竦めるようにして見上げるその先は
はるか遠い空の向う
やっぱり貴方は
地上の檻に閉じ込められては生きてはゆけない

なら、飛んでいくしかないじゃない?
私たちはこの檻が
どんどん狭くなっていくのを知っている
このままじゃあ体の大きなあなたは
檻の金網に潰されそう

極楽鳥の話をしてくれたね
彼らに足はなく
一生飛びつづけるのだ
飛びつづける事が出来るのだと羨ましそうに
あるいは気の毒そうに
その群に付いていきたかったのに
付いていけなかったのだと
くやしそうに

だから檻を探して
自分の居心地のいい空間を作ろうとしているのだろうけど
檻には限界があって
持ち主は多分これ以上広げられない

あなたに残されたのは空だけだ
檻に残って潰れるのを覚悟するなら
それでもいいけど
きっとあなたは私と同じように
檻の中から空を見上げ続ける事になる

ごめんね 無責任にさえずって
だってあんまり窮屈そうで・・・
私はあなたの大きな翼の影が蒼穹を横切る姿を
憧憬でもって見送るのが好きだから

私の羽は貧弱で
せいぜい電線の上に群れてお友達とお喋りするぐらい
あなたの翼はきっと強い
二つの足もしっかり持ったまま
きっと空を渡りきる

あなたが止まり木で休んでいる間に
燕雀がちょっとさえずったけど許してね

小雀の戯言だからどうか忘れてね
だけどずっと見ている燕雀たちが居たことは
ちょっとだけ
ちょっとだけでいいから覚えていてね


自由詩 鴻鵠へ Copyright 相差 遠波 2011-01-14 15:56:58
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