与太郎の空
……とある蛙

冬の凍てつく青空に
大きな大きな梯子掛け
雲一つ無い寂しい青空に
大きな大きな梯子を掛けて

与太郎 騒ぐは 梯子の終わり
とおく空には届かない。
梯子のてっぺん 高いとこ
それでも真上に青空が

与太郎 騒ぐは梯子の先の
梯子の先の希望に向けて
与太郎一人が 腕 延ばす
梯子のてっぺん なんとか立って
与太郎一人が腕のばす
のばした腕は空にのび
もがくように 中空に 
もがくように 振り回され、
見物人は大笑い
そのうち次第に呆れ顔

与太郎の顔は歓喜に溢れ
「僕はお空に手が届く」
与太郎の指先に
本当に本当に空の端が
与太郎の手のひらに
本当に本当に空の欠片(かけら)が

それが見えない見物人
それでもみんな大笑い
そのうちみんなで呆れ顔

みんな 空が見えなかった
見えているのは青い空
とても大きな青い空
それは空の一部だったが
それに気づかず 平気の平左
与太郎だけが 知っている
与太郎だけが 空つかむ


自由詩 与太郎の空 Copyright ……とある蛙 2011-01-10 12:39:44
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