海風
橘祐介
北に向かった
鈍色の海、灰色の波
身をゆだねる勇気はないけれど
寒い海に抱かれたかった
何も告げずに飛び出したあの街
何かが変わるだろうか
気がついたらこの海辺に来ていた
冷たい風は頬に痛く、陽は落ちる
遠い沖、波に隠れる小さな漁船
帰る港に向かっているのか
灯かりを目指して前に進んでいる
もう帰る場所もない
前にも後ろにも行けなくなった
夜が明けても、海風にただひとり
自由詩
海風
Copyright
橘祐介
2011-01-10 00:11:44
縦