明日の人
桜 葉一


 明日の人が
 明日の話をしに
 今日にやってきた
 昨日もやってきたというが
 僕は覚えていない
 昨日ということは
 明日の人は
 今日の話しをしていったのだろうか
 やっぱり僕は覚えていない
 
 明日の人は明日よりも今日のほうが心地よいよ
 といって少し笑った
 だからあんまり明日に帰りたくないな
 そういって今度は寂しそうな顔になる
 立ち去ろうとする明日の人に
 なんと声をかけていいのわからず
 僕は 「また会いましょう」 と言った
 明日の人は微笑んで僕に手を振った
 
 夜になって明日の人のことを考えた
 明日の人はどこか僕に似ている
 そんな気がした
 明日の人は明日もくるだろうか
 昨日もきたと言うのだから(僕は覚えていないけれど)
 きっと明日もきてくれるだろう
 明日はまた明日の話しをしてくれるのだろうか
 そんなことを考えているうち僕は寝てしまった
  
 次の日はとても目覚めの悪い朝だった
 体がだるく頭もおもい
 昼ごろ明日の人がやってきて
 明日の話しをしていった
 明日の人は 「昨日もきたんですよ」 といったが
 僕は覚えていなかった


自由詩 明日の人 Copyright 桜 葉一 2004-10-29 23:14:32
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