ドライブ旅行
生田 稔
九時前に坂本を出発曇りいて肌寒し厚着しており
年末の風さえ吹かぬ午後の道一つ越え京都へ行かむ
空腹を覚えつ辺りうかかがいて店などさがし並木道ゆく
曇り空車は多しわが心中これからのことしきり考う
陽の光満ちみつ湖辺鴨群れつどい夢より目覚め心はうつろ
一面に白き雲おおい静かなる滋賀の都おだやかにして
バギーより子の見つめてる方向に菓子を食みいる僕がいるなり
妻と子とコート売り場に訪ね来て息子購う茶色のセーター
やなぎ荘日暮れの宵の一時をコーヒーをのみ話をすれば
空蒼く陽は沈みつつ湖眺め今日一日の心広かり
粉雪のふぶく車道を疾走し車内の話にぎわいており
宮津来て冬景色の街道をゆけば少しく心も弾む
宮津駅前とんだ屋にカマス焼き魚食べにけるかも
城崎の湯に花の咲く頃となり男女は暖簾くぐりゆくなり
食事処に憩いいて連れの二人の帰りを待てば
山は雪路はしるくて先ほどより氷雨がしきりふりそそぐなり
蟹を食べ松阪牛をしたたかに食せし後に蕎麦すすりいて
日は暮れて淡き光のテーブルに和歌つれづれに記しおりけり