ぼくの生まれた日
オイタル

ぼくが生まれた日
今年のように
雪が物憂く降っていた
崩れかけた柱の根
巻き上げる夢の枝先

曇った窓に頬杖つくと
埋もれる氷の柱が
幾本も並んでいた
ぼくは泣かなかったけれど
指先は届かなかった

しばらくしてぼくは
椅子に置かれる
もたれかかる薄闇に
少しずつ伸びる時計の振子
廊下の折り返しに続く
黒い旅館のロビーの陰で
うす若い父の背広と
背を向けた母の襟足が
暗いガラス窓に
くすりと映る

柱時計が三十二時を打ち
ぼくはようやく
生まれようとする
記憶されるものから
すべてを
記憶するものとして


自由詩 ぼくの生まれた日 Copyright オイタル 2010-12-31 21:46:29
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