ふとん
黒い翼

北北西の風の中で
アオジが寒い声を上げるから
鼻のてっぺんまでマフラーに埋めよう
枯れ草は アオジの冬越しふとん

薄い氷の下の小川の流れ
ヨコエビがしがみつくのは紅藻ふとん

朽ちた切り株にびっしり生える
キノコムシの子どもにカワラタケふとん

1年 2年 3年重ねて
落ち葉の下で醗酵している
カブトムシの子どもには腐葉土ふとん

雨も雪も防げる 太い樹の幹には
春になったら生まれるだろう
ジョロウグモの卵を覆う
母グモが遺した柔らか糸ふとん

チビタマムシに テントウムシに
声なきつぶやきで賑わう樹の皮ふとん
吹きっさらしの冬芽の枝先には
蛹と重ね着 ウスタビガの繭ふとん
ソロメフクレダニには
イヌシデの冬芽に虫こぶふとん

陽だまりに出よう
森の南側は
照り葉ふとんでウラギンシジミが
森ひとつ分の樹木ふとんで
ホソミオツネントンボが
光の中でまどろんでいる


自由詩 ふとん Copyright 黒い翼 2010-12-31 21:22:20
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