引越し
たもつ

 
 
石化する
柔らかな石
心電図の
波形の谷間が
わたしたちの眠るところ
わたしたちの見聞きするところ
わたしたちの対話するところ

/年の瀬も差し迫ったふとしたある日
 一組の家族が引越しの準備をしている
 出発の直前まで
 母親は壁の亀裂を懐かしそうに指でたどっていた
 かつて寝室だった部屋の隅には
 積み残された子供用の座椅子
 一番末の娘が
 まだ座っている
 
 


自由詩 引越し Copyright たもつ 2010-12-31 06:26:37
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