How much?売りの少女
花形新次

2010年も
もうじき終わろうとしているのに
少女には年を越すだけの
十分なお金がありませんでした
少女は寒さと空腹と疲労でフラフラしながらも
ゴールドシティのメインストリートに立っていました
道行く人は誰も彼女を気にかけません
忙しそうに
足早に
少女の前を通り過ぎていくだけです
たまに少女の方からすり寄って
「ドウデスカ?」と聞いても
無言で立ち去るばかりです
How much?とも聞いてくれません
「ナゼデスカ、ドウシテデスカ・・・」
少女は心の中で
繰り返し呟きました
脳裏には絶望の二文字しか浮かんできません
それでもめげずに
何十人
いや何百人
いや何千人と声をかけまくりました
でも結局誰も買ってはくれませんでした
「ニッポンノケイキハヨクナッテナイヨ〜!」
いよいよ立ってもいられなくなって
冷たいコンクリートの上に
座り込んでしまいました
ポケットからタバコを
なけなしの一本を取り出すと
百円ライターを探しました
「アッ、ソウヤ、ライターモウツカイキッテシモウタンヤ〜」
タバコも吸えないのか・・・もうおしまいや
と思っていると
目の前に
火が点された
ライターが差し出されました
少女が顔を上げると
そこには50前後の
渋い男性が立っていました
 火、どうぞ
少女は、タバコに火を点けました
煙を吸い込むと
一瞬クラッとしましたが
それでもいくらか気分は良くなりました
「アリガトウゴザイマス」
そう言うと、少女は立ち上がりました
 いやいやと男性は言いました
 ところで、あなた・・・・・
少女はヤッター!と思いました
ついにお客ゲットしたでえ〜!
 あなた・・・つうか、キャシーさん
 いつまでこんなこと続けるつもりですか
「アア・・・」
 あなた、もう70過ぎてるでしょう
 寒いなか、夜通しこんなことしてたら
 あんたいつか死んじゃうよ!
「アア・・・」
 ほらっ、私と一緒に行きましょう
「ウチ、コウシテンノガスキヤネン」
少女が抵抗すると
 片言止めなさい!
 コッテコテの日本人なんだから、まったく!
と言って少女を乗ってきたワゴンに
なかば強制的に押し込みました
少女はショボンとしていましたが
内心「コレデ、ショウガツナントカナリソウヤワ」と
相変わらず片言でほっとしていました

少女は年末年始を幸せに過ごしましたとさ

















自由詩 How much?売りの少女 Copyright 花形新次 2010-12-30 07:02:17
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