クリームパン
……とある蛙

武蔵野を行く快速電車
僕の正面のシートに
座る柔らかな君
君が頬ばる、クリームパンの
甘い香りに誘われて
僕の視線は君の口元に
紅をひいた唇に囲まれ
齧られ押し出され
唇の横にへばり付いた
クリームの小さな固まり
それを君は舌を出して
ペロリと嘗めた

じっと見つめる視線の先
君の長い栗色の髪の背後
快速電車の車窓には武蔵野の
雑木林の丘が夕陽に照り
茜色射す
裸の枝の透間より
絡み合った軟体動物の
針のような影
駅前の商店街を一瞬
垣間見た後
白く細い指を嘗め
君は携帯に視線を降ろす。
そして、今日の日に微笑んだ

Merry Christmas


自由詩 クリームパン Copyright ……とある蛙 2010-12-26 21:42:02
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