ラビッツフット
あおば

                  101225


幸運の女神は猫の顔をしているのだと
いくつもの変数を宣言しながら彼はいぶかしげに首を振る
尻尾も振りたいところだが
のっぺりした尾てい骨には紛い物が縫いつけてあり
これが夕刻からのボランティア活動に必要なのだと
白い毛皮の着ぐるみの背中を目で均し
真面目な顔を取り戻し伝票を捲りながら
キィーボードに金額数字を打ち込んだりしている
ボイドの行方を辿ったりはしないのが彼のモットーで
確率論を学んだので荒唐無稽なことと
偶然の違いがよく分かっているようだ
ボイドの息子はイケメンで
ボイドの娘は器量好しの韻文使い
芝居がかった服装で音もなくやって来て
魔法使いのように必要な時と場所にどこからともなく現れて
確乎とした姿勢でかな釘流の文字を認めて小うるさい満座を唸らせる私語を黙らせて
これ以上ないと言うくらいのっぺりした顔の雄猫が
来年の干支を追い回す午前と午後が入れ替わる時間帯の
小判も大判も縁のない小動物たちが憧れるのがエトピリカ
水の中も空も自由自在に泳ぎ飛び回る
あたたかくなったので
ホーホケキョの声を聴きながら
ボイドの立ち居振る舞いを真似してるのだと
流言飛語が飛び交う巷の噂を知ってか知らずか
悠々と裾を翻してボイドの息子たちが馬に乗ってやってくるが
今日はクリスマスイブだと知っているので蹄の音も軽やかだ
よそ見していて入力ミスを繰り返すボイドの息子の似顔絵が
悲鳴を上げる
帳尻が合わないのでいつまで経っても昨日の売り上げがプリントできない
なにをしているのだ早くしろと
催促にやってきた課長の顔が少しだけ大きくのっぺりしたような気がしたが
ボイドの娘は笑いながら全否定しフリーズしたままの姿勢を保つ






「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作。
タイトルは、クローバーさん。





自由詩 ラビッツフット Copyright あおば 2010-12-25 10:16:12
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