黙想の部屋 
服部 剛

林道の枯草を踏み鳴らし 
彼は音楽室へ歩む

灰色の壁に 
暗闇の口を開けたドアを入り 
細い通路を奥へ進む

無人の音楽室は広く 
黒板の前に置かれた 
パイプオルガンと椅子の上で 
姿の無いバッハが弾いていた 

暗闇の音楽室の黒板に 
( 自らを、越えよ ) 
白いチョークの文字が薄く光る 

日常のありふれた場面が 
薄らうことのないように  
私が私の脈を打つように 

幻のバッハの指が 
鍵盤に、ふれる 

無人の音楽室で 
腰掛けたバッハは 
瞳を閉じて観照する 

レースのカーテン越しの 
青空に昇り  
明日の地平を照らし出す 
まあたらしい太陽を 








自由詩 黙想の部屋  Copyright 服部 剛 2010-12-24 01:07:40
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