ABOTT
竜門勇気


酒場に入るとすぐに
乾いた拳が目に入った
次に見たのは閑散としたカウンターに座る男で
話しかけても何も得ることはなさそうだった

マディって女をしってるかい「「「「
女らしくはない名前だね
マディってのは俺がつけた名さ「「「「
くちづけの一つで泥濘むような、そんな女だ「「「「

机の上に腐ったマティーニが転がっていた
男は腐った全ての酒すら愛せそうな男だった

テラスには太陽が溢れている
忘れそうになりそうな過去が
蘇る寸前の天気だ
そんなことを思っていると
再び乾いた拳が眼前にあらわれ
もう一度気を失った

泥がまぶたに張り付き
眼球を奥へ奥へと押しやっていく
冷たい開放が脳の奥から
泥とせめぎ合い
勝者のない戦闘が落ちた幕の裏で閃く

マディの泥濘を何度か楽しんだだろう「「「「
冷たいオーロラについて
一言進言出来るような夢を見ていた


自由詩 ABOTT Copyright 竜門勇気 2010-12-22 06:39:25
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