旅路の果て
yumekyo

新興住宅街 新興住宅街 俺は大っ嫌いだ
見通しがいい 見通しがいい やたらと見通しがいい
人影がねぇ 人影がねぇ 昼間は人の臭いがねぇ
公園から続く 緩やかな坂道
バットを担いで 自転車乗った クラスの奴等
追いかけてくる 追いかけてくる 見つかったら最後
Ah 朝が怖ぇ 朝が怖ぇ 部屋から出たくねぇ
Ah 夜を待つよ 夜を待つよ 何もない夜を待つよ

そして不意に立ち上がる
マジックペンで ×点
クラスメイト 抹殺
アルバム 川に投げ捨てる

躾というは 異論を許さぬ 事を言う
教育というは 異論をせぬを 許さないこと
されどこの国 どちらにしても 異論は許さぬ
おとなしい子を 褒めてつかわす 大人連中
「腕白でもいい 逞しく育って欲しい」ときに嘯く
その実単に 責任だけは 取りたくないだけ
20年間 GDPの 伸び率はゼロ
躓きの石 複雑骨折 奈落の底へ行く
モンペの母と 破廉恥教師 不毛な綱引き
疲れ果てては 大切な子ら ほったらかしさ

「現代社会は生き馬の目を抜くようなめまぐるしい変化の社会だ
急激な文明の流入を経験した昔の文豪達なら
悩みに答えてくれるかもしれない」

そして不意に立ち上がる
漱石 太宰に 鴎外 紅葉
Ah 理論武装 理論武装 派手さはないけど
今は何とか 今は何とか 耐え忍ぶ術を

普通に生まれて 普通に勉強して 
普通に部活して 普通に恋愛して
普通に受験して 普通に学生して
普通に就職して 普通に結婚した
婿の両親 嫁の両親 男友達 女友達
祝福の輪に おさまるふたり 予定調和の 美しさだね
膝っ小僧に 傷跡のねぇ 奴等にゃ寄れね
膝っ小僧の 古傷いたむ 冷える初冬よ
コンビニ夜勤 やめてようやく 正社員でも
酒乱オヤジ 殴るわ蹴るわ ボロ雑巾
うちじゃ 親父に 殴るわ蹴るわ 追い出され
一文無しの 野宿生活 時は来たれり
終わらせる日は 今日でしかない
理論はなかった

そして 不意に 立ち上がる
駅へ 駅へと にじり寄る
そして 不意に 立ち上がる
そばに じゃれあう 女子高生ら
そして 不意に 立ち上がる
手帳を のぞいた ビジネスマンら
そして 不意に 立ち上がる
都内へ でかける おばちゃんふたり

そして 不意に たちあがる・・・

終わりにしたかった


自由詩 旅路の果て Copyright yumekyo 2010-12-20 23:34:30
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