灰色の隙間
小林 柳

知らない場所へ行こうと
冬の海への切符を買った

隣の席は空いたままだ
いるはずのない君を思う


病気は今も治らない
相変わらず普通にしてる

でも痺れている指先が
なぜか痛むような気がする

別れるとき振り返らないのも
自然には出来ないでいる

だから驚いて少し笑った
ふと失くし物を見つけたように

また乾いた唇が切れて
素っ気ない血の味がした


氷のように冷たい風
吹かれて肌は震える

分厚いコートの奥で
縮んで寒さから身を隠す

ひとりひとり それぞれの冬だ


つまらない灰色の空に
深い呼吸が遠ざかる

静けさに沈んで
足跡があちこちに増える

マフラーが風になびいて
くすんだ波が寄せて

砂にそっと並んだ
二つの悲しい小石

触れ合わないその隙間が
君と僕の形だ




自由詩 灰色の隙間 Copyright 小林 柳 2010-12-20 01:55:14
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