悲しみよこんにちわ
寒雪



出会ったその時から
きみとぼくは
別れるのが当たり前で
目的地に向かう飛行機の中
引き返すことも出来ず
ただ
悲しみの待つ飛行場に着陸する時を
出来るだけ感じないように
ただ一心に愛し合った


少しでも抗うように
少しでも忘れるように
多くの喜びを
多くの楽しみを
二人の心を精一杯広げて
たくさん受け止めて
二人顔を見合わせると
たくさんの笑顔がそこに


時は誰を差別することもなく
ただ淡々と己の役割を果たす
やがて滑走路に着陸する
二人の乗った飛行機は
二人の関係を引き裂く
タラップを降り
ゲートを抜け
二人は別々の出口から
永遠に交わることのない
軌跡を歩み始める


夜行列車の中
流れる時をうつろな目で
ただ行き交うままに追いかける
悲しみは生まれてすぐ
大きく成長して
反抗期の第二次性長期の青年みたく
ぼくの心で暴れまわる
だけれども
目を閉じると
悲しみの痛みと同じくらいの大きさで
触れ合った二人の
かき消すことの出来ないエピソードが
両手一杯に抱えた微笑と共に
ぼくの心の奥底で座って
ぼくをまっすぐ見つめている


その感情がある限り
ぼくは悲しみを受け止める
その思い出が消えない限り
ぼくは悲しみを抱きしめる
サガンが書いた小説のタイトルを思い返して
ぼくは笑って明日も
悲しみに挨拶して
新しい二人の出会いを求めるのだ


自由詩 悲しみよこんにちわ Copyright 寒雪 2010-12-13 08:46:37
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