聖夜
月乃助

わたしたちは生きのびて
また
残された年の
とびらが閉まっていく


精霊たちもねむる
誰もが永遠をくちにする夜
そとは降りはじめた



落ちるほどに白さをます街は
いつしか消え去り


しずけさのなかに
いちりんの百合の花が目をさました
そんな気がしたのです


木の実が枝になるように 
生まれた
数えきれない罪も
実が落とされていく罰も
今宵すくわれる


複雑な結晶をかくし
無垢な白いすがたの
幾何学文様が幾重にも重なり
穢れをおおいつくして
あらたな世界を生みだすように


手をさしのべる
その先の星の輝きに
たとえば争いのない明日をみつめたり
たとえば憎しみのない世界をえがいたり


逃げだすことはひどく簡単でも
まもるものが手にあまるほどなら
ためらいもなく
選んだ道をゆきなさい
わたしたちはそのために生まれてきた


セント・ニコラスのそりの音を
心まちしながら
いたいほどに安らぎが
ふりそそぐ 夜






自由詩 聖夜 Copyright 月乃助 2010-12-12 17:48:28
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