聖夜
月乃助
わたしたちは生きのびて
また
残された年の
とびらが閉まっていく
精霊たちもねむる
誰もが永遠をくちにする夜
そとは降りはじめた
雪
落ちるほどに白さをます街は
いつしか消え去り
しずけさのなかに
いちりんの百合の花が目をさました
そんな気がしたのです
木の実が枝になるように
生まれた
数えきれない罪も
実が落とされていく罰も
今宵すくわれる
複雑な結晶をかくし
無垢な白いすがたの
幾何学文様が幾重にも重なり
穢れをおおいつくして
あらたな世界を生みだすように
手をさしのべる
その先の星の輝きに
たとえば争いのない明日をみつめたり
たとえば憎しみのない世界をえがいたり
逃げだすことはひどく簡単でも
まもるものが手にあまるほどなら
ためらいもなく
選んだ道をゆきなさい
わたしたちはそのために生まれてきた
セント・ニコラスのそりの音を
心まちしながら
いたいほどに安らぎが
ふりそそぐ 夜