グレープフルーツ
橘祐介
乾いた道我はゆく
道なき道
砂の砦を横目でにらんで
前に
前に
進んでいく
その先になにがあるのだろう
砂の島
虹色の泉
信じるものも
愛するものも
そこに行けばあるのだろうか
いやそこにあるのは
ただの砂
きっと何もない
小脇に水筒かかえ
干し肉背負い
鐘を鳴らして
旅に出る
何故だろう
ここにいれば
水も肉も
果物も
やさしい人たちもいると
いうのに
何を求めて
命をかけて
砂の道に出るのだろう
分からない
分からない
分からないから
一歩
一歩を踏み出す
ついてくる友はいないのか
飾りの付いたナイフもあるのに
一人荒野に出ろというのか
引き止める君はもうここにいない
砂の道に今日、今から出かける
今度帰ってくる時は、
いったい何を持って帰れるだろうか
何も分からない
屍となり帰る我が身の哀れさか
分かっていることは一つ
ここにいては駄目になる
極彩色の毛布も
ご馳走の大皿も
何もなくなる砂の道
ああ、でもそこに行かなければ
生きている意味などない
苦きグレープフルーツ右手に持って
星のあかりをたよりに
砂の道を歩きはじめる