神々が宿るという紺碧の空に
西天 龍

雪形を探して田を起こし
もみ殻を焼く煙に手を合わせるように
まじめに、まじめに暦と向き合って暮らしている
それでも時として川は溢れ、山は崩れ
食べていくのに難渋する

まじめに、まじめに生きているのに、と
神々が宿るという紺碧の空に向かい
世迷言を並べるけれど
神々は黙して、ただ秋の風が通り過ぎるだけ

「モノ」さえ逃げ出す都会から来て十年
庚申塔を祭り、今でもムシを恐れて夜明かしをする人々と
茶わん酒を飲んでいる
風で落ちたリンゴの相談は明日するそうだ
何とかなると皆がいう
なぜと問えば「俺で十五代目、ずっとこの村の百姓だ」

この谷に棲むのは、人だけではないから
人に媚びてはくれないけれど
水が天と地の間を巡っているような
大きな循環の邪魔をしなければ、
人を決して裏切りはしない
そういうことだろうか

「なんとかなる」と云う人々が信じる神々の空
「なんとかなる」という声が聞こえた気がした


自由詩 神々が宿るという紺碧の空に Copyright 西天 龍 2010-12-10 01:20:03
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