『通過列車の万有引力』
東雲 李葉

通過列車の引力に従った。
女はただの肉塊と化す。
小指ちぎって約束したのに。
薬指から抜ける白銀の輪。
鐘が鳴るよ白い教会。
列を成すよ同色の背。
「いやあね」「こわいわねぇ」
烏が鳴くよ不躾な声。
花嫁の紅いブーケを受け取った
何人かもまた何日後か何年後か。
あるいは真白い骨の夢。
黄色い線の内側へ KEEP OUT
通過列車は呼んでいる。
幸せな人ほど呼んでいる。
不幸な人は過ぎ行くことより
停まる時が好きらしい。
通過列車の万有引力。
抗えるのは無重力。


自由詩 『通過列車の万有引力』 Copyright 東雲 李葉 2010-12-09 16:05:49
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