過去 未来 河川敷 黒くて寒いでたらめ
竜門勇気


そんで二人してどっかの遠くまで歩こうぜ
寒いのも我慢して
眠いのも知らんふりさ
彼女の手を引いて
一人ぼっちで伸びていく
一人ぼっちで干からびていく

河川敷でむつかしい顔して
ちょっと楽しくなってたんだ
未来だけ怖くて
過去はもうどうでもよかった
見渡す限り
空は濁って明るく
心が死んでいても音楽が聞こえる

死にたくなったら死のーか
ぬるいコーヒーが残ってる
綺麗な言葉が残ってたら今のうちだ
苦しくなったら抱き合おうぜ
死にたくなったら死のーか
死のーか

そんで河川敷を歩こう
ぬるいコーヒーだけじゃ嫌なら
メーカーズマークって酒もあるんだ 実は
足が止まってしまわないように
少しだけならいつでも持ってる

この草は春になったら
どんな花が咲くのかしってる?
古い家にあるっていう
オレンジ色の秘密の窓をしってる?
飽きる前に一緒にいよう
飽きる前にいい思いをしよう
彼女の手に触れたまま
一人ぼっちで歩いてる

灰色の石に触っては笑い転げたり
前髪を気にしながら怒ったり
今日も世界は不安定
光ったり 止まったりで
陽が落ちる瞬間だけ少しほっとするね
未来のクソ野郎はいつも僕の顔がちょうどいい場所に来るまで
バットを持って待ってる
けど夜の間は奴も眠ってる
こうやってここに居れば
いつまででもやり過ごせる
いつまでも変化のない河川敷だ
僕たちはどこへ行こうとしてるんだろう

君と二人
一人ぼっちで歩いてる
爪の先に咲く花って聞いたことある?
あのキノコは食べれる?
寒い日は粒の匂いがするね?
ねえ

死にたくなったら死のーか
死にたくなったら全部過去にしようか

過去の棲む場所は
いつもすぐそばに見えて
いまにも肩を捕まれそうで
何度も振り返りながら
僕らは逃げてしまうけど
過去の腕は背中についていて
あまり知られてない事だけど
未来に顔を向けていれば
絶対に僕たちに触れることは出来ないんだって

とりあえず
死にたくなったら死のーか
死にたくならないようにしながら
過去の自分が帽子を手にとって
迎えに来るまでのほんの少しの間だけ
死にたくなったら死のーか
あの花はなんて花?
黒くて寒い水をなんて呼ぶ?

そんで
いつかきっと二人で河川敷を歩こう
手を繋いでぶらぶら
ほら紫色の花が咲いた、とか
あんなの何の意味もないでたらめさ、とか言いながら



自由詩 過去 未来 河川敷 黒くて寒いでたらめ Copyright 竜門勇気 2010-12-09 06:31:03
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