小川 葉

 
 
(は)

はぶらしのけが
たんぽぽのわたげのように
あけていたまどから
かぜにふかれてとんでいく

もうそんなきせつなのだ
はぶらしばたけにいくと
はぶらしのうかのおばさんが
ことしもほうさくだよと
しろいはをひからせて
わらっている

おちゃがしをいただいて
おいとましようとしていると
おひとついかがですかと
しんもののはぶらしを
いっぽんわたしにゆずってくれた

まだやわらかいから
やさしくなでるようにね
たくさんみがいてあげると
よろこびますから、と
わがこをようしにだすように
みぶりてぶり
おばさんはおしえてくれた

かえりみち
とおいそらをみあげると
ゆうひのむこうへとんでいく
はぶらしのえのむれ

みちばたにさいている
きれいなあかいはぶらしが
とてもきれいだったから
いっぽんいえにもちかえり
はぶらしたてに
にほんならべた

なにかの
おまじないのように
らいねんの
いまごろは、と

そんなきせつも
あったのだ
はをみがきながら
いまおもいだしている
 
 


自由詩Copyright 小川 葉 2010-12-07 22:18:15
notebook Home 戻る