その夜
せかいのせなか
かなしいときに
ねぎを刻む
そういう物語があったけれど
わたしはじぶんがじゅうぶん青くさい
ことにへきえきしているから
ことさらに平気な顔して大根を刻む
まっしろな朝、まっしろな腕、まっしろな未来
などというものを
などというものを信じていたわたしを
へらへら笑いながら
やさしくぶつ切りにしてやる
皮をむいた大根を切って
刻んで
米のとぎ汁で煮あげて
しなしなと縮んだだいきらいも
しんでしまえもすきも
いっしょくたにして湯気をふいている
むかし
大根足はほめことばだった
とか
そういうよけいな知識を
おもいだしながら
泣かない