その夜
せかいのせなか


かなしいときに
ねぎを刻む

そういう物語があったけれど
わたしはじぶんがじゅうぶん青くさい
ことにへきえきしているから
ことさらに平気な顔して大根を刻む
まっしろな朝、まっしろな腕、まっしろな未来
などというものを
などというものを信じていたわたしを
へらへら笑いながら
やさしくぶつ切りにしてやる

皮をむいた大根を切って
刻んで
米のとぎ汁で煮あげて
しなしなと縮んだだいきらいも
しんでしまえもすきも
いっしょくたにして湯気をふいている

むかし
大根足はほめことばだった
とか
そういうよけいな知識を
おもいだしながら
泣かない



 


自由詩 その夜 Copyright せかいのせなか 2010-12-07 20:45:26
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