季節
葉leaf

今日も街路を携えて歩く
街路の広がりの粒を
遠さの粒を
ポケットに携えて

街路樹の影が地面に落ちている
ひらひらと落ち続けている
これだけたくさんの影が溜まっているのに
影は街路を汚すことがない

都市は絵の具を食べ過ぎた
たいていのものに
消化不良の色が着いている
塗り忘れられた透明な壁をさがして
注がれた声をもらす

季節はたったひとつしかない
この季節に名前はない
あらゆる言葉は季語であり
あらゆる会話は詩となる
この季節が僕を奪う
遠い星のマンションの6階まで

自転車はいつもはるか遠くを見ている
車体を精確にかしげて
遠くまで自分を連ねていくような軽さ
自動車はいつもこっそり絵を描いている
人がいた空間を積み降ろし
車内は線と色で満たされていく

季節はたったひとつしかない
この季節に名前はない
季節の孤独は僕の孤独だ
季節の水分は宇宙の電磁波だ
この季節のために
僕は少しだけ余分に眠る



自由詩 季節 Copyright 葉leaf 2010-12-06 09:28:32
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