空気
小川麻由美

私はつぶやくように話す
わずかに空気を振動させる
相手の目を見ながら
時に目をそらしながら
言葉を発する

私の声は1秒先に居る人には
届かないだろう
閃光の後の
雷鳴の間を数えた
子供の私は見つかるだろうか

私はつぶやくように話す
わずかに空気を振動させる
空気の重さを感じる時
夜空を見上げ
数々の過去が
ちりばめられた光の粒立ち

私は大きく歌う
空気を思う存分振動させる
快楽
私のやり方でしか
空気を揺さぶることはできない
例え他人が不快に感じても

私はつぶやくように話す
わずかに空気を振動させる
相手はよく「え?」と返す
何度も何度も同じ言葉を話し
その言葉しか発することが
できなくなってしまうのではないかという
不安感
いらない恐れを感じる

つぶやきは静けさの中で
その微細な力を発揮する
私はつぶやくように話す
わずかに空気を振動させながら
日々つぶやく




自由詩 空気 Copyright 小川麻由美 2010-12-05 20:01:32
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