今日
salco
過去など何処にもありはしない
ちょうど幼い私が失禁して
呆然と佇んだ道端の
あの豆腐屋が
とうに消えて無くなっていたように
私はいつ、大人になり
いつから老い始めたのだろう
私はいつ、若い娘になり
いつから若い女でなくなったのだろう
人は過去の堆積の上に今を生き
蓄積のビットを数えて生きている
まるで預金通帳の取扱い高みたいに
実在せぬ金額の印字に頬をすり寄せて
4千万円の来し方に思いを馳せてみたところで
残高が増えるでなし
未来など何処にもありはしない
甘い夢を描いたって
それは小汚い不動産屋の
ガラスに貼られた間取り図のようなもの
店子は所有権など永遠に持てないし、家主には
低所得者しか寄りつかぬボロ家を抱え込む
悪夢だけが待っているようなもので
死んだ鶏に卵は期待出来ない
年食った卵巣や脳みそにもだ
お前は腕を精いっぱい前に伸ばして
渦巻く気流の彼方にある何かを
血走った目を剥いて掴もうとするけれど
糸くず1本、指に引っかかりはしない
いつも靴のサイズ大の今日