産む
北野つづみ

空になった子宮は
痛みをともないながら
少しずつ
小さくなっていったけれど
物語はまだ
そこに残っている
気配がした

だれもが
語りたい と
思っていた
産むという行いは
どれも似ていて
どれもなにかが
決定的に違ったから

太陽のした
大きな声で
おおぜいの人に
語っても 良かった
 そうしたら
 よのなかは
 どんなにかへいわになる
 ことだろう

けれど
波が砕けて
引いていったあとの砂浜
みたいに
産み終えた人は 
ただ幸せそうに
微笑んでいるだけだった

眩しすぎて
閉じてしまった
まぶたの内側に
光が あるように
産み終えた人の
閉じたくちびるの向こう
いまも悠然と
佇んでいるもの




自由詩 産む Copyright 北野つづみ 2010-11-27 20:19:14
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