ウサギの親子スポンジ
鵜飼千代子

まあるい墓石に水をかけ清めると
くうの字の彫刻から 遅れ水が流れてくる
丁寧に拭きあげるのだが
涙の跡のように、うっすらと水垢が残ってしまう
墓石用クリーナーとウサギの形の大小のスポンジで
娘と一緒にせっせと磨く
 
普通では落ちないのだから
一度のお参りで何とかしようとせず
根気よくですね
 
と、笑いながら手を動かしていると

 「笑わない!ちゃんとやる!」と
幼稚園で習って来たのか、娘に叱られる 
 
「天彦さん、暑いですねー」と言いながら
六歳児が柄杓で惜しみなく水をかける
 
炎天下では、花立ての水が一日で無くなるだけでなく
切り花の表面全体から水分が蒸発して
茶色く枯れるのではなく 
色鮮やかなドライフラワーのようになるのですね 
などと
今日も変わらず、学んでいる


初出 詩誌「焰」第87号 所収



詩誌には掲載されていない、実物のウサギの親子スポンジ


自由詩 ウサギの親子スポンジ Copyright 鵜飼千代子 2010-11-27 20:17:43
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