リアルのすべて
豊島ケイトウ

 リアルには実態がない
 わけではない、勿論
 ただそれが波及する場所に
 なにかしらの不具合が
 生じてしまうのだ、きっと

 リアルはとても
 いたずらっ子だから

 リアルは
 内側から発光する地球儀と
 駅構内に掲示された路線図を
 こよなく愛するが、しかし

 花々の耳目を両手でふさぎ
 錆びついた月に落書きをする
 どちらも平然として
 ときどき口笛でも吹きながら

 そんないたずらっ子のくせに
 夜は一人で眠れないし
 近所から聞こえる欺瞞を
 内心とても恐れているのだ


自由詩 リアルのすべて Copyright 豊島ケイトウ 2010-11-26 11:05:54
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