くらやみ
アンテ

ほら はやくおきなさい
なんどもゆすられて
めをさました
まどのそとはまっくらで
てんじょうできいろいでんきゅうがひかっていた
おじいちゃんはしんけんなこえで
ほら はやくしたくしなさい
わたしのおふとんをめくった
あわててふくをきて
げんかんにいくと
いつもよれよれのおじいちゃんが
しゃんとせをのばしていた
がいとうのあかりをたよりに
えきまであるくあいだ
おじいちゃんはわたしのてをしっかりとにぎりしめていた
でんしゃにはほかにだれもいなくて
きいたこともないえきにくりかえしとまって
しゅうてんでのりかえて
またつぎのでんしゃにのりかえて
ってぐあいにどんどんすすみつづけるあいだ
だれものってこなかった
だんだんねむくなって
うとうとしていると
とつぜんおじいちゃんがたちあがって
ちょうどついたえきにおりた
そとはあいかわらずまっくらで
おじいちゃんはわたしのてをひいて
どんどんすすみつづけた
ころばないよう
あしもとにちゅういしてあるいていると
さあついたよ
おじいちゃんのこえをあいずに
とてもおおきなかわがあらわれた
どこにもあかりがないのに
すいめんがきらきらひかっていて
やわらかいおとをたてていた
おじいちゃんはわたしのてをはなして
ざぶざぶかわにはいっていった
はいっちゃだめだよ おぼれちゃうよ
ひっしにさけぶと
おじいちゃんはたちどまって
むねまでみずにつかったままわたしをふりかえった
すいめんとおなじように
おじいちゃんのからだもきらきらひかっていた
もういちどよぶと
おじいちゃんはゆっくりともどってきて
かわからあがった
もうおうちへかえりたい
っていうと
おじいちゃんはうなずいて
わたしのてをひいてあるきだした
きゅうにねむくなって
あくびをれんぱつしていると
おじいちゃんはわたしをおんぶしてくれた
ふりかえっても
かわがどこにあるのかわからなかった
せなかにもたれていると
とてもあたたかくて
おじいちゃんがはなしかけてくれるたび
うん とか
ううん とか
こたえていると
こえはぼそぼそととおくなって
そのうちなんにもきこえなくなった
とてもしずかになった




自由詩 くらやみ Copyright アンテ 2004-10-26 02:33:15
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