この世のひかり
吉岡ペペロ

また動物の話をはじめた

彼女はたまった動物番組を見ながら

いっしょに歩くように話してくれる

自然が好きなの、山登りじゃないよ、そういうんじゃないの、

やわらかな鼻声がかわらしく跳ねている

彼女の動物好きがなぜなのかを考えながら

話にあいづちを打っている

アザラシの足って、なんで退化したんかな、

進化しようと思って進化した動物はいない

退化にしてもそうだろう

海が黒い、きたないとかじゃなくて、深くて、黒い、

シュノーケルしたとき海のなかを

ゼリーみたいだと言ったのを思い出す

海亀やさかなたちが、おいでおいでってしてた、

動物たちの姿かたちや行動が

彼女にあたらしい発見の興奮を与えている

動物って、食べることが重要みたい、食べるためにすごい旅したり、からだもそれに適応して進化したり、

なにかいいことを言おうとしても言葉にならなくて

ただあいづちを打つばかりだった

中原中也の詩を思い出す

長男文也と動物園にいったときの詩だ

どんな動物を見ても猫(にやあ)と言うばかりの文也が

さいごに見せた鹿だけは

つのによっぽど惹かれてか

なんとも言わず眺めてた

ほんにおまえもあのときは

この世のひかりのただなかに

立って眺めていたっけが・・・・














自由詩 この世のひかり Copyright 吉岡ペペロ 2010-11-26 00:48:33
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