ひとひらの雪
月乃助

霧氷を知らない 海風の町に
 ひと夜の冬化粧
  許された 雪の舞う月の夜


すべてを白く染める 悪のような力で、
あなたの寝室の灯かりが消える
 僕は自分であろうとして
  逃げ出したくなる 狂恋に
 身を任せ


たどり着く場所は、いつも同じ
無防備な月が悲しみに 満たされている
 欠けるほどに 
   壊れるほどに


 凍える足で雪に佇み
 暗くなるみらいを凝視する
あなたの差し出す林檎の味を思い出しながら


体ではない 救いを求めて
 つまずくように雪を踏む
消し去られた枷を見定めようと、


紅葉と黄葉のつぎはぎだらけの街に
 偽りの雪が積もる
  少し風のある 迷いの道
 願い事を口にしては、女をさらいに行く
吐息を白く糾い


  男の腕に眠るあなたを
  覚醒させる装飾の言葉をさがしながら
夢ばかりがあなたの部屋の窓を鳴らす
 粉雪ほどの粒子の顔をして


忘れることなどできはしない
 抱きしめた気持ちは、胸に埋めたまま
  苦労して笑い顔をつくるあなたを繰り返し
    どんな真実が待っているのかと、
少しのあいだ訝っても


   生ぬるい涙を流すことなど【 もうしない 
   無力をさらけだしては、
   雪のひとひらに 願いをこめる
落ちてくるそのどれもに
灯をともしながら
想いを燃やしながら
 

それが、あなたを責めようとも
 溶け去らぬ 雪の想い
  白い道に残された 月の明かり
焼けた足跡








自由詩 ひとひらの雪 Copyright 月乃助 2010-11-24 11:04:41
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