免許の更新 
服部 剛

二俣川の運転免許試験場に行ったら、人間達が列になり、渋滞していた。列に割り込む若者に「あなたは何処に並んでいるの!」と青い制服のひとが叱り、視力検査の小部屋では、レンズを覗く初老のおじさんが健気にも「右っ!」とか「左っ!」とか言いながら、拳に力を入れている。(古びたタイルの便所で用を足す僕は、「ここは変わらず、昭和だなぁ・・・」と呟いた) 

免許を取れた頃は嬉しくて、実家の両親を乗せて食事に行った。更新の葉書が送られた最近は、新婚の奥さんを乗せて風呂屋に行った。初めて自分の車を運転した日は、上司を横に乗せながら、道路に横付け立ち往生でクラクションを鳴らされ、初めてバイパスに入る日は、思いっきり対向車線に頭を入れ、初めて車で出勤した日は、何度も道を曲がり損ねた挙句の果てに遅刻した・・・

そんな僕も、遂に更新の日を迎え、二俣川で「違反者講習」を受けています。2年前のあの日のように心の中で(安全運転!)とにっこり笑って写真を撮った僕は、講習を終えたら新しい免許を手に、仕事中の奥さんに報告をしようと思い、公衆電話へ歩いていった。 







 


自由詩 免許の更新  Copyright 服部 剛 2010-11-17 18:56:06
notebook Home 戻る  過去 未来