誰かの匂いがしてた頃
番田 


きらきらと留まるものを見ているのなら
手を伸ばさず 歩いていくのなら
近道ではないかもしれない
それは 近くにあるんだろうと 知る
川の畔に 綺麗な鳥が飛んでいくのを抱き合って 見ていた
それは 見ているだけで 幸せになれる
そんなひとときなのかもしれない


公園は噴水が様々なきらめきを辺りに散らばせていて
まるでレミオロメンの曲が聞こえてくるみたいに美しい


演奏家がハトを集めながら
ベンチで 音符を鳴らしている


僕には 歌えなかった
難しかったあの曲が
歌えるような気になれた 気がした
灰色の空の中に 輝く 破片のようなあの歌を
ラムネ色の中に 見せてよ
私のまっさらなこの 髪の毛に 口づけてよ
そういってた あいつは
今ごろどこだろう





夜明けの 部屋の彼方で
手にした体の暖かさ
僕の 意志を 弾いた
この温度は 今は どこにある


カラオケボックスの中で色々な曲を熱唱し
ドリンクバーも頼まずに 現実を忘れて歌った


君は大学受験の志願書を置いてどこに姿をくらましたのだろう
今となっては気にとめる者もいない





朝の駅前のどこかに
色々な形をした ネオンサインが 灯る
声をからして 叫んでいる人が
ビルの体にアルカノイドのように 声を 反射させ
スモッグの 向こうに放っていくのだろう
何もかもが忘れられるべきなのだと



自由詩 誰かの匂いがしてた頃 Copyright 番田  2010-11-17 02:59:01
notebook Home