Glueckliche Fahrt 〔旅立つ君に〕
Giton
靄は掻き消え
青空覗き
風神は不安の
帯を解く。
── J.W.v.Goethe: Glueckliche Fahrt
.
きみを幾重にも縛りつけている
その帯を解いて行く
きみを幾重にも繋いでいる
その紐をさらに巻き重ね
.
外は嵐 風はいつこの部屋を壊すのだろう
外は雨 きみはぼくの腕のなかで微睡んでいる
そして目覚めれば疾風は神々を追い立て嵐で
濃くなったふたりの時間をきみは冷蔵庫から取り出す
.
きみとぼくの爽やかな朝餉きみは旅立つのだから
この日の記憶を刻みつけるように一重また一重
巻いた紐の先は今度は誰に絡みつくのだろう
.
誰にも縛られないきみの身体を縛り
何者にも屈しないぼくの心を制した
不可視の造物主は次に何を要求するのか
.