深夜 真昼
木立 悟
人のようにも
穴のようにも見える影が
石の壁に沈んでいる
黒を造る
三本の樹
黒より黒く
黒より低く
雨の日と揺れ
辺りの音と
異なる震え
わずかな
わずかな傾き
小さな石の敷きつめられた
誰もいない土を裸足で歩いて
海のそば 小屋のはざま
足の裏の痛みの他は
どこも皆青く 青く
ここは涸れ川だったのか
それにしては石が白く尖っている
湖と海に挟まれながら
水はどこへ消えたのか
誰もいない景色を砕き
石は音の無いものを追う
到かなかった滴を追う
紙きれ 俎上
紙魚 熱 動き
遠去かる見えない腕
動かない猫
動かない曇
白が白を巡る
軸なき軸に
露光は満ちる
道の両側に
古く小さな映画館がつらなる
道には誰もいない
映画が終わるまで
出てこないのだろうか
明るい 誰もいない
明るい
消えかけた灯と灯
はざまのこだま
暗がりの針と指
終わりのような
夢のような
ふたつの白