営む女
朧月

母は黙って
何層もの小さなレースを
縫い付けていた
私たちの家庭に

あらゆる窓が
母のつくったレースで埋め尽くされても
黙って縫い続けた
私たちを見ずに

母は
母であり続け
私たちはそんな
母のつくるレースの
やがて一部になるのだろうか

父はとうに父を放棄し
姉ははじめから天使のようであり
私はなにかを期待されて生まれたのだが

編むという作業をくりかえしくりかえし
母は母の顔をした
ただの営む女になる

娘という文字から
良をとり縫い付ける
レースの隅に
ただの女になって

私は母のレースを受け継ぐ
営む女になる





自由詩 営む女 Copyright 朧月 2010-11-09 17:49:10
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