子どもの気持ち
塩崎みあき

坂道で
暗い街灯の暗い
坂道の中腹で
小さな子ども
がいる

座っている
あの子ども
知っている
知っている子ども

お母さんの
帰りが遅いので
坂道に
座りにくそうに
座っていて傍らに
犬が一匹
傍らにずっといる
飼っているの
ではなくて
子どもが
飼いたいと思っていた
ので傍にいた

けれど
お母さんの
帰りが遅いことが
子どもの
白いほっぺたを
ほっぺたが
白いのにすこし
赤らんで
それは寒いから
ではないので
寒くはないんだと思っていた

この近くでは
兎狩りが
盛んなので
冬になると毎日
行われている兎狩り

兎は悪い事を
人間にとって
悪い事をするので狩られた
兎は良い事を
人間たちにとって
良い事をもたらすので狩られた
でも
兎は狩られた

兎の子どもは
待っている
お母さんの帰りを
待ちながら
くらい洞穴の
中から
少し顔を出す
プルプルと震えて
震えているのは寒いからではない
ことはよく知っている

兎狩りがあったので
お父さんが
大きな笑みで
帰ってきて
兎を捕らまえたので
お父さんは
大きな笑みを作っていた
兎料理を
子どもにふるまうと
子どもは喜んで食べて
子どもは
兎料理が好きだったので
兎を食べて喜んだ
その子どもの
ことを知っている

今はお母さんの帰りを待っている
坂道で
お母さんが
なかなか帰らないので
座りにくいけれど
坂道で待っている
子どものほっぺたは
白いけれど
今日は特別赤く染まっていて
子どもはもう
家には帰らなかった
のでお母さんは
帰る場所を失くしてしまった


自由詩 子どもの気持ち Copyright 塩崎みあき 2010-11-08 20:24:56
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