百貨店
紀田柴昌

百貨店にいる。
2階建てで、だだっ広し
1階だけで、2日もかかる広さだ
にもかかわらず、薄暗く床はぬめっている

天井から雫が滴れててくる
何色か? わからない
もしかしたら、自分が盲なのかもしれない

とにかくも、滴れているには違いない
両脚が、「ずずり」とひきずるように重くなる
エスカレータで2階へ上がった時
大きな波が襲ってきた
両腕が なくなってしまった両腕で
何かにしがみつこうとするが
指に感触があるだけで、押し流されてしまった

雫は もう滴れてこない
すべて流れ去ってしまったからだ
床は いまだぬめっている

どうすることもできず、たちどまり
夢の中へと 引きずりこまれてしまう

どうすることもできずに



自由詩 百貨店 Copyright 紀田柴昌 2010-11-04 03:14:46
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