哀切./I
吉岡ペペロ
それはまるで鉄条網のまえで
雨にうたれる哀切なる群衆のようだった
おまえとキスをして
おたがい探しまわって
ふたりして群衆を見つめていた
哀切./i
それがまるで鉄条網のまえで
雨にうたれているのはふたりのほうだった
水たまりを無視しながら
晴れかけたむこうに出かけよう
エクスタシーな顔をするのはキスのときだけ
おまえを犯した親からなんて逃げてしまえ
飛び立つまえのコクピットのガラス窓
ぜんぶ叩き割ってしまえ
暗黒の業火に卒業アルバムが焼かれている
豪雪のしたの秘密の基地を破壊して
黒煙だけ雪原を汚すのを見つめずに走れ
哀切./I
これが最期のようになんどもキス
つめたくて濡れたおまんこは灼熱で
ふたりが交わる場所を待ちわびていた
それはまるで鉄条網のまえで
雨にうたれる哀切なる群衆のようだった
おまえとキスをして
おたがい探しまわって
ふたりして群衆を見つめていた
哀切./i
それがまるで鉄条網のまえで
雨にうたれているのはふたりのほうだった