哀切./I
吉岡ペペロ

それはまるで鉄条網のまえで

雨にうたれる哀切なる群衆のようだった

おまえとキスをして

おたがい探しまわって

ふたりして群衆を見つめていた

哀切./i

それがまるで鉄条網のまえで

雨にうたれているのはふたりのほうだった


水たまりを無視しながら

晴れかけたむこうに出かけよう

エクスタシーな顔をするのはキスのときだけ

おまえを犯した親からなんて逃げてしまえ

飛び立つまえのコクピットのガラス窓

ぜんぶ叩き割ってしまえ

暗黒の業火に卒業アルバムが焼かれている

豪雪のしたの秘密の基地を破壊して

黒煙だけ雪原を汚すのを見つめずに走れ

哀切./I

これが最期のようになんどもキス

つめたくて濡れたおまんこは灼熱で

ふたりが交わる場所を待ちわびていた


それはまるで鉄条網のまえで

雨にうたれる哀切なる群衆のようだった

おまえとキスをして

おたがい探しまわって

ふたりして群衆を見つめていた

哀切./i

それがまるで鉄条網のまえで

雨にうたれているのはふたりのほうだった






自由詩 哀切./I Copyright 吉岡ペペロ 2010-11-03 19:21:33
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