道 ‥ 序章
アラガイs


(ここもむかしはみんな桑畑じゃった‥)
年老いた父や母を車に乗せて走っていると必ずそう切り出したのが、今では自分のことのように懐かしい 。

刈り取られた田んぼ/稲架、萎れた葱/大根の葉、土色の秋に暮れる田畑の画景は、ビルと屋根瓦の群集に追われ、あっちこっちと弛んだ雀の嚇し網は四方を張り巡らす高い電線へと受け継がれたモノグラム 。

ふり返れば後ろを気にすることもなく埃舞い上がる砂利道を歩いてゆく
小川から引かれた用水路の、軟らかい底に隠れる泥鰌を眺めては時間を忘れて立ち止まる。
遠く霞む山の平面図形
いつのまにか飢えた野良犬と酔っぱらい紋白蝶を引きつれながら
帰る‥草色のあたたかな薫り。沈みゆく世界が、どこまでも広く感じられた
あの頃
舗装のない凸凹の道。
無邪気な人々のおどけた足跡が笑う
アナログサンダルに泥水弾けば、子供たちは季節の淡い光りを一身に浴びながら、黄色い裸で駆け抜けた
瞼を閉じれば
セイタカアワダチ草が道化に揺れる〜風
どこまでも
どこまでも真っ直ぐな記憶が、クレヨンのなかに残る
それが
ただ一本のわたしの 道 。









自由詩 道 ‥ 序章 Copyright アラガイs 2010-11-01 05:44:00
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