飛んでけ
Oz
水溜まりは弾かれた
跳ねる水滴
破壊される水面の映像
雨上がりの虹と
両足のダイブ
行き交う雀は
ピーチクと
その青空を謳歌する
河川敷の上、
髪をポニーテールにして
サングラスを掛けた女性が走り
髪の短いおばさんが
黒い大きな犬を散歩する
工場服のような
ジャケットを着たおじいさんが
自転車をこぎ
小さい子供が
ガヤガヤと傘をたたんで
駆けていく
そして
彼は水溜まりへ
ダイブした
バシャンッ
ソコで静止する
目は閉じられる
体から力が抜けていく
喧騒が遠ざかる
色彩が失われる
匂いも
暗闇
深い
深い
闇
ゴーォ
圧倒的音が
全てを支配する
反射的に顔を上げる
目を開ける
とても低く
ジャンボジェット機が飛んでいた
それは視界の右端の方から
左端へ
そして
遠く
遠い何処かへ
反射的に彼はソレを追う
しかし
追いつけはしない
飛行機は飛んでいく
背後には
黒い足跡が
残されている
鞄から
何かの紙を取り出して
紙飛行機を折る
それを
河の方向に向けて
投げる
「飛んでけ」
紙飛行機は
案外に
長い飛行を続ける
それは
風を受け
高く飛んだ
ただ
向こうの河川敷が
見えた辺り
その機体は
フラフラと揺れ
次第に高度を落とし
彼は何処かへ去ってしまった
ただ黒い足跡はまだ残っているから
そんなに時間は経っていないようだ
ただ追う気はない
足跡は長く続いているし
僕は
少し疲れてしまったから