The Beachboys/Dream dreams dreamer
はだいろ

ペットサウンズのおしまいに、
去り行く電車をぼくを置いて追いかけてゆく、
犬には五匹の子犬がいて、
そのうち一匹の雄犬の名前がトンといい、
引き取られた先のメルボルンでは、
映画「渚にて」でフレッドアステアが乗り回したフェラーリの影が、
まるで原爆の日の名残のように焼き付いていた。
トンは賢くおとなしい犬で、
傷ついた少年の隣にトコトコやってきては、
何も言わずに終わらない夏を見送っていた。
ブライアン・ウィルソンがそんな子犬の行く末を気にしていたとは思えないけれど、
幻の1967年のマジックサマーのアルバム、
「My Sweetest Dreams 」の冒頭を飾ったタイトル曲に、
泣かない子犬の悲しみを嗅ぎ取ったのは、
大学受験に失敗しつづけた日本の少年のぼくだけではないだろう。
どうしてこんなに悲しいんだろう、ブライアン。
どうしてあの子は大人になってしまうんだろう。
トンという名前は、
古いフランスの画集から取られていて、
その日本人は若くして恋のため、
亡くなってしまったという。
夏の朝、土砂降りのカリフォルニアで。






自由詩 The Beachboys/Dream dreams dreamer Copyright はだいろ 2010-10-27 20:08:45
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