あれ
因子

うしろをついてくるわたしは
いつかの母のような顔で
わざとらしくとても傷ついている

そのつめたい手を
振り払って歩く
後ろでぬるい呼吸をするわたし
いそいで呼吸をしているわたし


思わず手を伸ばしても
やっぱりあれはわたしだから

他のだれかの手を探すから


振り払って歩く
歩いて、歩いて、
どこへ行き着いても
いつか必ず
あれと手を繋ぐ日が
来ると知っている


自由詩 あれ Copyright 因子 2010-10-27 17:20:09
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