山の向こう
番田
影の中に風景を見つめて
私は 何となくそこで 目を閉じる
夢のイメージは そこには無いのだと
そこにある日だまりに座り込み
そこにある体の疲れで
目の中のそこで 眠る
目は眠る
風すら無いと
私も留まる
肥大化した 文明の中に潜む 様々な汚れが
訴えている 海面に乱反射している ヘドロの中で
何となく 船長は 岸壁でひとり立ちつくしている
そこに 青である 海面があることを
思いこんでいる 頭の中に描写して
色の泣きわめいている 海の
顔を見つめている
*
箱の中を私は見つめて描いている
宝石を底に見つけて一人で笑っている
目で 頬で 口で
鼻で 息で 声で
奇麗である 物なのだと
見ていたのだ 石ころを
船長はデッキで何となく目を閉じながら 眠っていた
黄金の浜辺が存在する場所があるのだ ということを
描いている 私の言葉として
微笑みの中を 流れる 彼方へと
たぶん そう
ひとりで 私はいつも本のページをめくっていたのだ
山々は ぼんやりと 窓の彼方にそびえていた
何も 想像の向こう側には存在することはないのだということを
溶液のような粘りとなった 私の涙はそこに留めさせられていたのだ
個体の縁に発酵させられた養分は 風呂釜を流れ出されていく