引力
ホロウ・シカエルボク






轟音が
前頭葉を打撃し
頭蓋は中空に
中空に咲くイメイジ
種子は咲けぬ地平に
飛び散り
干乾びながら
次の運命を待つ
飛散した眠り
目覚めは
触れぬ距離を保ちながら…


凍土のような日を悟るとき
切り取られた運命は完結する
それを短絡だと言うなら
アンタは愚鈍なんだ
一〇〇秒の中には一〇〇個の理由があり
それを
拾えるだけ拾って紡ぐことが
この俺の
役割だ


夜に波打際に出る
夜の波打際は明るい
海は
星を跳ねるのだ
触れれば生
潜れば死
もの言わぬものこそが
なにもかもを語るのだ
波打際に立つと
この世で最も曖昧な
領域に存在することが出来る
それを便宜的に名付ければ
亡霊という名になるかもしれない
月の光は
海に裂け目を作ろうと目論んでるように見える


深海に居たことがある
そう語って差し支えない
簡潔に言い例えるなら
それは深海だった
確実に
疑う余地もないくらいに


洞穴の中で
光を諦めると
目を開くことを忘れる
本当の暗闇には
見ることは必要ない
耳が尖る
鼻が尖る
皮膚がざわめく
見えるもの以外の
全てを捉えるために
レスキュー
俺を救助しないでくれ
ここで生きられるのなら
その方が都合がいい
冷たい地下水で
冷たい地下水で
切れてゆく身体を
知らずに生きる
息を止めたり
始めたりしながら


爪先が濡れたので
波打際を離れる
ふたつの靴を捨てようか
本当に歩いて帰るために





自由詩 引力 Copyright ホロウ・シカエルボク 2010-10-20 22:52:39
notebook Home 戻る